にゃあとみる風景

それはノラさんの時からで、どこからともなく現れて、
出迎えてくれていました。目が合うと、にゃあ〜と鳴きスリスリ。
こちらが真似て、にゃあ〜と言うと呼応するように、にゃあ〜と
鳴いていました。そのまま無意識に常用していたら
にゃあはごはんを食べに来た？とか、にゃあはどこ？とか
記号化されていました。
今ではしなくなりましたけど、当時は外でにゃあと呼ぶと
にゃあ〜と返事をしてこちらに駆け寄ってきたりして、
可愛かったんです‥、よほ。

まさか飼うことになるとは思っていませんでしたから
怪我をしたにゃあを病院に連れて行って、
お名前は？と訊かれた時は困りました。
猫ににゃあと名付けるのは、犬にワンと名付ける感性、いや
知性に等しいと思えたからです。ドギマギして、
口ごもっていると、いつもは何と呼んでいますか？と言われ、
‥にゃあです‥‥。
大袈裟ですけど、社会的にも名前がにゃあになった瞬間です。
診察券にもニャーと書かれてありました、にゃあですけど、ふぅー。
なんかこう、敗北感というか、自己嫌悪というか、私のダメな心の奥底まで
覗かれたような気分になりました。まぁ、二年も
呼び続けていた名前ですから、今さら変えるわけにも
いかなかったんですけど‥、ね。

それでも、口ごもった時、何か可愛い名前を言おうと、必死にもがき
考えたんです。思いついた名前が、ステファニーとかキャサリンとか‥、さぶっ！
ほんと素晴らしい名前ばかりでして。しかし、もしも
その中の一つを口走っていたら、今ごろもっと恥ずかしい猫好き人生だったハズと
考えれば、にゃあにしておいてラッキーだったとも思えます、わにゃ？
いや思いたい！、無理矢理にでも、ね。